人気ブログランキング | 話題のタグを見る

11回目の誕生日。

11年前の今日、あなたは手術室へ向かいました。
腕に注射をして、担架に乗せられて。
何時間か後、薬がよく効くあなたは、麻酔からなかなか起きなくて
終わってからなかなか手術室から出てこなかったね。

手術室から出てきたあなたには、子宮も卵巣も卵管も何にもなくなってた。

21日は母のもう一つの誕生日。


小5だった私にはそれがどういうことだかよくわかっていなかったんだ。
小2のときから毎年のように父が入退院していた私には、
今度はお母さんなんだってくらいにしか思ってなかった気がする。
でも今ならわかる。
女の人から子宮がなくなることが、卵巣がなくなることが、どんなことなのか。

なんかね、私はあなたが入院していたときのことをほとんど覚えていないんだ。
どうやってご飯を食べていたのか、誰が洗濯していたのか、誰がラビの世話をしていたのか・・・
あなたの病室や、手術した日のことや、
21日は香織の誕生日だったから、ちょっと早くお祝いしたことや、
あなたが退院した日、なかなかあなたを独り占めに出来なかったことや
そんなことは覚えているのに、どうやって生活していたのか全然思い出せないんだ。
なんでだろうね。
おばあちゃんは、お父さんにも入院してるときのお母さんの大変さがわかるようにって
ほとんど手伝いに来なかったって言ってったね。
ほんと、どうしてたんだろう。

でも一つだけ覚えているのは、七夕まつりの日。
お父さんが私一人を残してお酒を飲みに行ってしまったこと。
おじちゃんがそんなお父さんにものすごく怒ってたこと。
おじちゃんが怒ったの見たの、それだけかもしれないな。
それだけは、すべてくっきり覚えてる。
私、寝たふりしてたんだ。


癌という病気。
女の人から子宮や卵巣がなくなること。
しかも、まだまだ子供が生める年だったのに。
今ならわかるんだ。

ごめんね。お母さん。
何の役にも立てなくて。
あなたが病院から送ってくれたはがきを見るたび哀しくなります。
毎年7月21日が来るたびくやしくなります。
私はあなたのたった一人の娘なのにね。
ごめんね。お母さん。ごめんね。

by punyo_chihi | 2004-07-21 03:59  

<< 言葉。 帰る場所。 >>